ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)の交響曲は全部で4つあります。
今回ご紹介する曲は最初の交響曲である「ブラームス交響曲第2番」!
まったりとのびやかな雰囲気から、シリアスな感じ、ちょこまかとかわいい感じ、テンションの上がるノリノリな雰囲気まで。
全楽章楽しめるので、個人的にトップレベルで大好きな交響曲です!
とってもおすすめ。
この記事では、ブラームス「交響曲第2番」の構成や特徴、魅力をまとめて解説していきます!
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ブラームス交響曲第2番:背景
前作から何があった?あっという間に完成!
ブラームスは第2番をわずか4ヶ月で書き終えてしまいます。
交響曲第1番を作曲した時は21年もかかったのに「何があったのか」と思いますよね。


大きく2つ理由が考えられるよ。
ブラームスは完璧な交響曲を生み出してきたベートーヴェンを尊敬するあまり、最初の交響曲は筆が進まなかったことはこちらの記事でご紹介しました。



だからこそ最初を乗り越えたら心がすっと軽くなって、悩み込まずに書けたのかもしれません。
ブラームスはこの時、避暑にオーストリアのケルンテン地方、ヴェルター湖のほとりにあるペルチャッハという地に滞在していました。
ペルチャッハは湖がとても綺麗で最高の眺めなんです。
*引用:「夏の作曲家」ブラームスお気に入りの避暑地 (austria.info)
どうですか、この美しい風景…!こんな所に数ヶ月もいたブラームスがうらやましい限りです。
ブラームスは一気にインスピレーションが湧いたそうです。
これほど魅力的なペルチャッハ。次のタイトルにつながっていきます!
別名:ブラームスの『田園交響曲』
ペルチャッハの美しい景色で羽を伸ばすブラームスは、批評家エドゥアルト・ハンスリックへ


「ヴェルター湖のほとりにはメロディがたくさん飛び交っているので、踏みつぶさないようにね」ときっとあなたは言うことでしょう。
と手紙を書いています。
他にもこの地で「ヴァイオリン協奏曲」や「ヴァイオリンソナタ第1番『雨の歌』」が生み出されました。
また、ブラームスの交響曲第2番は、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』と雰囲気が似ていることから、別名「ブラームスの田園」とも呼ばれています。
第1楽章の牧歌的なのどかな音楽は、たしかに田園風景とマッチしていてペルチャッハにもぴったりですよね!
ブラームス交響曲第2番:編成・構成
楽器編成…フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、1st・2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
第2楽章…Adagio non troppo – L’istesso tempo, ma grazioso・ロ長調(H dur)・4/4
第3楽章…Allegretto grazioso (Quasi andantino) – Presto ma non assai – Tempo I・ト長調(G dur)・3/4
第4楽章…Allegro con spirito・ニ長調(D dur)・2/2
演奏時間…約40〜45分
初演…1877年12月30日・ハンス・リヒター指揮・ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
ブラームスの交響曲第2番は初演が好評だったので、改訂が加えられていません。
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ブラームス交響曲第2番:第1楽章 Allegro non troppo・ニ長調
半音のモチーフ&ゆったりと絡み合う音の風景
第一楽章はゆったりとした3拍子。
冒頭はチェロとコントラバスの重厚な低音から。
誘われるようにホルンが第一主題を吹きます。続いてフルートとクラリネットが引き継いでいます。
ホルンと木管が交互に吹く中に、突如一筋の光のようにヴァイオリンとヴィオラが差し込んできます。
初めは明るかったのに、雲行きが怪しくなって最後ファ♮が不安を感じさせます。


和音がなくなって、ユニゾンだけになるのも不安さが増すポイント!
ティンパニだけが静かに「ゴロゴロゴロ…」と鳴り響き、トロンボーンと木管がまだまだ不安げに顔をのぞかせます。
そしてA Durの属七の和音(ラド♯ミソ)。オーボエがヘミオラで次へつなぎます。
パーンと視界が開けるように、ヴァイオリンがさわやかなメロディーを弾きます。
森や湖の上をドローンや鳥が駆け抜けているようなイメージがありませんか?(私だけ?)
A Durへ無事たどり着いて、不安から解放されましたね。チェロとヴィオラもうねうねした動きで活発さが出てきました。
メロディーが他の楽器に折り重なりながら、4つの塊→2つの塊と短くなり、次のフレーズへなだれ込みます。
フォルテでわくわくするような音楽の中にも、半音のモチーフがこれでもか!と詰め込まれていますね。
78小節目で波打つような半音の階段を登り、第二主題へ移ります。
エモさ全開の第二主題
チェロが甘いエモさ全開の第二主題を奏でます。
ヴァイオリンが1stと2ndで糸を編むように交互に織り込まれていきます。


全部1人で弾けそうじゃんって?ブラームスは違うパートと弾くことで立体的(ステレオ効果)な聴こえ方を狙ったんだ!
↑ところでこの第二テーマ、有名な『ブラームスの子守歌』のメロディーに似ていませんか?
しかも同じ作曲者。もしかしたらこの曲からテーマを借りたのかもしれませんね。
木管、ヴァイオリンとテーマを引き継ぎながら盛り上がって、次のゾーンへ。
ちなみに盛り上がる途中にも、第二テーマの破片と半音のモチーフが。こんなところがブラームスは本当に上手ですよね!
急にどうした!元気はつらつ
雰囲気がガラッと変わり、3オクターブもの跳躍をする元気いっぱいのテーマが現れます。
ゆったりしたメロディーでも、ヴィオラや管楽器のこのリズムが「どうなるんだろう?」と思わせますね。
再び第二主題が出てきます。2回目はチェロからヴィオラに交代していますね。
フルートの細かい装飾もあって、よりかわいらしい感じになっています。
落ち着いて、179小節目で2カッコへ進むと展開部です。
展開部はフーガで魅せる!
音を変えながら、テーマがあちこちに散りばめられて進んでいきます。
展開部では、第一主題がフーガとなって様々な楽器と掛け合います。
第一楽章はいよいよクライマックス。
半音・第一主題・3オクターブの跳躍といったモチーフを使って、重厚で緊張感のある盛り上がり方を見せます。


最初のゆったりした音楽からは想像できないよね!
個人的なお気に入りポイントはこれ。強弱の指定が寄せては引く波のようで、きれいです!
最後は楽しいけど、儚い夢心地
そして298小節目で泡がはじけるように「パン!」と弾き終えると、木管が優しく舞い降りてきます。
あとは再現部。調や楽器を変えて、同じ音楽が出てきます。
テンポがもとに落ち着くと、コーダ。
1stヴァイオリンが豊かで、どこか夢心地のような気だるい音楽を奏でます。


Sul Gの指定はないけど、全部G線で弾くと効果的だよ!
最後の部分は飛び跳ねてかわいい雰囲気になりますが、例えばホルンなどに見られるようにテーマは断片的にしか出てきません。
まるで今までの出来事が「あるおとぎ話があったんだよ」という雰囲気です。
穏やかですが、どこか寂しく儚く温かい和音で結ばれます。
ブラームス交響曲第2番:第2楽章 Adagio non troppo – L’istesso tempo, ma grazioso・ロ長調
長調なのにどこか寂しい?長いメロディー
第2楽章は冒頭からチェロが第1主題を弾きます。
最初は不安で落ち着かないメロディーが、画像の最後の音でやっとH Durに落ち着きますね。
まるで苦難にもがきながらも人生こんなものだ、と思いふけっているようです。
一歩一歩踏みしめるようにメロディーが続きます。この上なく優しい旋律です。
優しいだけではなく、盛り上がったと見せては再びちょっぴり物悲しい方向へ行ってしまいます。
なかなか一筋縄ではいきませんね。


ブラームスは「自分の生涯で1番美しいメロディーだ」と言っているんだよ!
次々楽器が追いかける!
先ほどの2番目の画像にある、第1主題を発展させたものがこれ。
ホルン→オーボエ→フルート→チェロバスと、次々追いかけていきます。
追いかける系はすぐ先にも出てきます。
28小節目ではチェロとヴィオラ→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンへとメロディーが移り、一瞬感動的な盛り上がりを魅せます。
第2主題はシンコペでゆらゆら!
第2主題は木管によるシンコペーション。
弦のピチカートと一緒に、ふわふわ夢心地のようなメロディーです。
ヴァイオリンに移ると、一気に高い「ド」までオクターブで跳んで盛り上がります。


丸で囲んだ部分は全員お休み!休符が、余韻を感じさせるステキなスパイスになっているよ。
45小節目からは息の長い、表情豊かなフレーズです。
寄せては引く波のように行ったり来たりしながら、短調へ劇的に進んでいきます。
悲劇的なクライマックスからの落ち着き
金管の「ファ♯ーシー」のファンファーレを合図に、クライマックスを迎えます。
ここは第1主題のバリエーションをつなげたもの。どんどん音が上がっていき、テンションマックスです。
その後、徐々に落ち着きを取り戻し、最後は安心感のあるH Durで幕を閉じます。
ブラームス交響曲第2番:第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) – Presto ma non assai – Tempo I・ロ長調
3楽章は一言でいえば、とにかくいたずらっ子でかわいい音楽!
オーボエののびのびしたメロディ
分かりやすいABABAの形式の3楽章。
まずはオーボエがのびのびとしてかわいらしいメロディーを吹きます。


思わず歌っちゃうような音楽!
チェロのピチカートが良い伴奏になっていますね。フルートやクラリネットがうまい具合に絡みながら進みます。
まるでコメディ!びっくりする仕掛け
33小節目からは3拍子のゆったりした音楽から、2拍子の速いPrestoへと急にガラリと変わります。
でもよく見てみると、音の上下は同じ。
どちらも同じ主題が使われているのに、こんなに雰囲気が変わるなんてすごいですよね!


拍の最後にアクセントを入れたから、びっくりするじゃろう!ちょっと面白おかしくしたかったんじゃ。
木管が入ってくると、弦と交互に半音ずつ音が上がりながらテンションが上がっていきます。
まるでバトルしている感じ。
「シーシード」のテーマが上下逆になりました。ここでは音も変わっていますね。


専門的には「反行」という作曲法だよ!
fから一気にPPまで落ちて、こそこそする雰囲気になりつつ落ち着いていきます。
3拍子に戻るサインが天才
私がすごいなと思うところはここ。
その後、8分の3拍子でPrestoになります。ここでは1:2のリズムになっていますね。


シンプルだけど分かりやすいメロディーを何度も使っているね。愛される理由が分かったよ!
最後まで優しくかわいらしいテーマは健在。
「…というおとぎ話がありましたとさ。」と締めくくるような終わり方が素敵ですね。
ブラームス交響曲第2番:第4楽章 Allegro con spirito・ニ長調
内緒話からの喜び爆発!
弦楽器がまるで内緒話をするかのように第1主題が始まります。


この「スラーでつながっている休符」がポイントだよ!何か表したかったんだろうね。
木管が加わりつつ、先行き不安な和音で消えていきます。
するといきなりフォルテで爆発!第1主題が発展して喜びが音楽に溢れます。
テンションMaxのところでは「レドレファ」が何回も。
ところどころブラームスが敬愛する、ベートーヴェンのようなしつこさも出てしまうお茶目っぷりも見えますね。
この「レドレファ」の音形はこの先たくさん出てきます。
画像の114小節目や126小節目の木管の追いかけっこにもありますね!


見つけると楽しいね!
疾走感のある情熱的な第2主題
78小節目から第2主題です。疾走感のあるメロディーが気持ち良いですね!
第2主題から盛り上がった先、135小節目では本来4拍子なのに3拍子に聞こえる仕組みや、音の繰り返しがあります。
「この先どうなるの?」と気になる演出ですね。
2通りの楽しみ方!
138小節目は全パートがバッチリ決まるかっこいいところです。


2通りの楽しみ方があるなと思っているので紹介するよ!
2つ目の方法だと、音楽が重たくなるのでここだけゆっくりになるかもしれませんね。


指揮者を見てみると面白いかも!
後半184小節目でもこのような裏拍が強い場所が出てきます。
テーマが発展していく
雲行きが怪しくなり短調になると、再び第1主題が出てきます。
しかしここでは、冒頭のメロディーを上下逆さまに形を並び替えたもの!
206小節目からは、明るくも暗くもある不思議なふわふわした部分に入ります。
管楽器が代わるがわるモチーフを吹きながら進むと、再び第1主題に戻ります。
盛り上がってフィナーレへ
375小節目くらいからのコーダ(終結部)では、半音のテーマと第2主題が合わさって盛り上がっていきます。
→シンコペーションのようになって、現代風のノリノリのダンスミュージックになる